遠い日の記憶である。
私はあまり水泳が得意ではなかった。
特に飛込みが怖くて極力やらない様にしていた。
そんな夏休み前、学校の水泳大会の選手選考の際、
ひょんなことから人数あわせのため選手に選ばれてしまった。
不覚である。
隣の席の女子が「私と一緒のチームだね。」とちょっと笑った。
「そう・・・」と力なく相槌を打つ私。
大会当日、憂鬱そうに体操座りする私は
目前の3コーナー飛び込み台を見上げた。
台の頂上に立つのは隣の席の女の子。
授業中では想像もつかなかった美しいS字ライン。
‘ヨ~イ’の号令とともに前かがみになるもっと刺激的な曲線。
「ああ・・飛び込み最高」とため息をついた。
新学期になって隣の女性に会うのが気恥ずかしかった。
高校2年、夏の終わりの記憶である。